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26 ニラの人魚 第一章 3 (Aquatec Ape 水棲原人)

コペンハーゲンのマーメイド
 スマトラ・アチェの騒動が収まりそうだ。
国際交流基金ジャカルタ日本文化センターに新人が赴任して、挨拶だかなんだか知らないが出向いた。これはタクデルの代役は務まらない。会話が日本語だから。
いくらかの不安と緊張がありますが豊かな自然と多様な文化を誇る任地での文化交流の現場に参加出来る幸せとおっしゃっていたが、半年も経たずにこの巨大な伏魔殿に取り込まれて失望と惰性に陥らぬようお祈りします、とは言わなかった。

ウインから電話が来たのは惰性に陥っていた時だった。
「I surely met his boy diStera Maris Hospital Makassar! Jam berapa bisa ketemu?」
彼ほど長くなると、自分が何語で喋っているのか分からなくなるのだろう、子供に会ったって? 自前でエアチケット買って行って来たのか、Crazyばか! すぐ行くと答えてから,別れたのはそれから十時間も経っていた。
「溺死だったよ、でも生きていた。わかるか!」
「わからない」
「ステラマリスは面会謝絶だった。こうゆう時はオランアシン(異人、外人)は都合がいい、でかい身体で通じない言葉を喋ればKTP(身分証明)サ。面会謝絶なのにボーイはピンピンしてたよ。ほとぼりが冷めたらまた普通の子供に還るんだろ。
病院もマカッサル一の威信にかけて医学的検査はしたさ。運ばれた時は身体はふやけて皮膚はぼこぼこの溺死体だったのだから。心臓鼓動はもう殆ど回復していたけど体温が異常に低くて血流もなくちょうど熊や山鼠と同じ冬眠状態だったって。医学的にはそこまででリンゲル注射した程度なのだろうが、またその快復速度が並じゃあなくかさぶたが一皮むけるように治ってしまったとゆう。治れば病院の役目は終わりで、大騒ぎのほとぼりが醒めた頃退院で、面会謝絶は騒ぎの為だったのさ」
「Conguratulationおめでとう」
「茶化すなよ。そんな事もあろうかと僕は発つ前にマカッサル最高のドックンに連絡しておいたんだ、ザイナルズハルデイン師だよ。名前知ってるだろ、失せ物、先祖呼び、相性から新しい大統領、この世の終わりまで黙って坐ればぴたりと当たるんだ。信じる?」
「うんにゃ、知らない。以前俺のホンダアコードが盗まれた。警察は捜せなかったけどドックンのお告げ通り犯人付きで出てきた事があった。その程度には信じてもいい。でも君はその道では玄人だからね、」
「いいかね、キヤ、人間の中である特殊な能力を持ってる人がいたとする。人々は神の使者だとか霊媒だとか祈祷師だとか、強い預言者や超能力者は神様そのものになる場合もある。人間はコミュニケーションに音声を使う唯一の動物とゆう事になっているが動物はどうなんだ?狼が群で狩りをしたり渡り鳥が一斉に飛び立ったり、もっと凄いのは海生動物の最近の研究では鯨などは人間が聴けない超音波で数百キロ間で情報交換したり、イルカなんざげらげら笑いながら泳いでるってゆうお喋り動物なんだ。連携を取りながら、そうさ話しながらその波長を高めたり増幅してスタンと呼ぶ武器にして捕食魚を麻痺させて優雅な食生活をしてるのが解明されて、調子のいい海軍が隠密特殊兵器として訓練してるってゆう位で人間の会話なぞ足元にも及ばない。人間がハモニカ吹きならいるかはオーケストラなんだよ。人間が生意気に自分らには聞こえないから喋べれないと勝手に決め込んでいるんだよ。超能力者はその範囲が常人より僅かに広くて'お告げ'が聞けたりテレパシイ通信が出きると考えればあながち迷信とかとは言い切れないなにかがあるのじゃないかとね。
ズハルデインはトランス状態で、ボーイが体験した風変わりな旅を語ったよ。
ボーイはキラキラ輝く海面を下から見ていた。息をしなくても夢のようないい気持ちだった。だんだん暗くなって行く。おじさんとともだちが手を引きながらいろいろ話し掛けてくれた。みんな解ったから怖くなかった。眠ってしまった。呼ばれたらまた行きたい。
普通ならバカバカしくって話にもならない与太噺にしか過ぎないが、シュリーマンは仮説を立ててトロイの遺跡を発見したんだ。僕もこの与太噺を解きほぐしたいのだ。
何故って事実、そのボーイが事実なんだから絡んだ糸を仮説で解きほぐせば必ず真実に行き着くと確信してるよ。
そこでマーメイドが表れるわけだ。人魚は昔っから船乗りの間では伝説以上の実在として語り継がれてきた。奇妙な事には噺は一貫して同じなんだよ。
薄気味悪い妖怪じゃあなくって美しい、悩ます、歌を聴くと頭が混乱してしまう。
時化の時でなく必ずべた凪ぎの時しか表れないとか共通してるんだ。歌もいるかのスタンじゃないかと思ったのだよ。マーマンとは言わないが、ボーイも或る生き物の意志で運ばれたと思う以外考えられないのだよ」
「アラウンザワールドシングルハンダーは多かれ少なかれそれに逢っているのは認める。長い一人旅での幻覚、幻聴で片づけられているケースだが。俺の友人に単独世界一周航海者ナカムラがいるが、南アフリカのダーバン沖で'奴'に出会った。フネは自作のHYAKKI-MARUとゆうんだが。彼は寡黙で法螺吹きや話題性のある男じゃあない。
一周して帰ってきても、航海記を書いたりアドバイサーでマリーン業界の先生にもならずスーパーマーケットの時間給でひっそりと暮らしてて、借金を返すにはあと五年はかかりますって結婚も出来ずにいるそんな男なのだ。
カーム(凪ぎ)が続いて、なけなしの燃料で久しぶりでエンジンを掛けたが調子が悪くって修理している時、ソレと数十秒眼と眼が見合ったが何故か恐怖心は湧かなかったと。
ソレの気配、見つめあった時に何故かは分からないが意志の疎通があったとゆう。
ダーバンに入港して隣りのドイツ人のフネにアロングサイド(横付け)したんだが、彼も同じ経験した事が分かるとぶったまげて日本語通訳を連れてきて詳しい話しをし合ったが
海坊主の姿まで全く同じだったので、その時になってやっと怖くなったそうだ。ドイツ人の方はもっと念が入っててバウ(舳先)が沈む程艇を揺すられて舷を握ってる手も見たってゆうんだから幻覚にしては念が入っていると思うがね」

ウインの熱弁は止まるところを知らないで続いた。
「海原が魔界だとは誰も思わない。奇妙だ。チョモランマ登頂は専門クライマーでなければ登れないが、大洋横断は'運さえよければ'児戯に等しいからか。
高校生が三人で中等世界地図だけで渡ってきて「此処はオランダですか」って聞いたかと思うとヴェテランセイラーが次々に消えるんだ。アランコラ、タバレリ、ジャパニーズのアメリカズカッパー、ナンバもデッキにいて十分もしないで落水したんだろ。これを信じられるか。
いいかいキヤ、エヴェレストだってたかが空気の中に出っ張ってる謂うなれば下界と同じ気体の世界で変わらない。海は気安く考えるが液体の世界でそこに一歩たりとも踏み込めない地表とは全く別の世界なのだよ。月まで行く今のご時世だけど海は表面だけだ。
六千米まで潜ったとジャパンが自慢する深海調査船だって眺めたとこはポイントにもならない。マンモスタンカーが往来しても航路はほぼ決まっていてそのほかの海は通らないんだ。地球表面の70%は海なんだぞ。その広い海に人間は只の一人も住んでいない、住めないのだから表面だけ眺めてるよりない。しかし人間はAquatic Ape(水棲猿人)だとゆう説も浮上している。山にイエテイがいて海にいないのは納得できない」
「狭い陸地にもイエテイとかビッグフットやネッシーもいるんだから海に人魚がいても困ることもないよな、でも海では足跡が残らない、、、。KDDの海底ケーブル検査用AE100
とかゆう自律型海中ロボットなら2000米の深度で目標に50メートルまで接近出来るってゆうからそれでも借りてくるか」
「ネス湖のネッシーは法螺吹きイギリス人の手の込んだ悪戯だったのが残念だ。
イギリス野郎は信用できん、半世紀以上信じられてたピルトダウン頭蓋骨化石もねつ造品だったし。だが、ネアンデルタール人は絶滅したわけではなく生きているんだ」

彼の喋りは凄まじかった。ボックス席の客が振り向くのも気にもせず、瞳は潤んで歌うように続ける。
「地上の野生哺乳動物は激減して野人は生息環境劣悪な僻地で生き長らえている。一方海はどうだ。野生海生哺乳類の鯨やいるか、あざらしやセイウチなど数千頭が捕食にも困らず悠々と生きている。生活環境としては地上より圧倒的に有利なのだ。
マーメイドはイエテイよりずっと古くからの我々の友人なんだよ。
コペンハーゲンのエドヴァル・エリクセン作人魚姫のブロンズ像で視覚化されたように、無垢で可憐な海泡の精として定着したかどうかは問題ではない。マーメイドは必ずいるのだ。海の広さは陸地の七倍なのを忘れてもらっては困る。
ニンフ以前は幻想画家レオン・ベリイやハーバート・ドラパーが描くマーメイド(海乙女)は、しとどに濡れた長い髪、豊満な両の乳房、小さなイタヤ貝の殻で秘部を隠して、屈強な船乗りたちを惑わす快楽へ誘惑する魔女で、キリスト教世界での反道徳の象徴であるが故の毒ある悦楽に繋がる妄想の生き物だった」

「現代では貝殻の欠乏からか全身を晒す魔女が週刊誌に氾濫する世になったが、海が汚染されてしまったからか人魚に宿る妖麗な神秘性は皆無になる。それにおかしいな、女ばかりで男が現れない。繁殖出来ないじゃないか」
「十六世紀に入って地理上の発見、大航海時代に突入し、人々は大洋に乗り出す。
1493年1月8日、クリストファーコロンブスの第一次航海で、ドミニカのヒスパニョラ島沖で3匹の人魚が海面高く舞い上がるのを目撃して日誌に記入する。
長く過酷な航海を続ける疲れ果てた船乗りが、幻覚か幻聴か、波間に漂う妙なる歌声に耳をすませば、腰まで裸の女達がこちらを見て婉然と微笑むのを'見た'のだ」
「俺もこの間テレビで見た。シドニイオリンピックでゴールドメダルを独占したイアン・ソープを。彼の足は32センチで指には水掻きがついてるそうだ」

「私がどうにも解らないのはウオーレスの絶筆'香港人魚物語'なんだ。あれほどの天才生物学者は最後に人魚物語を書き上げた。彼の結語は人間がホモサピエンスなら人魚はホモアクアリウスだと断定して、発見した人はどうか私に教えてくれと悲壮な願いを書いている。僕は暗記してるよ。
Despite being classified as Homoaquarius it is more similar to Homosapiens
Much more than a chimpanzee or an orangutan to Homosapiens.
It would be rather dificult to distinguish them from the classification of Homosapiens.The Mermaid has an apparatus at the base of the nostril, which is very sensitive to humidity in the air and may cause an unusual state generated by flamed fire or the Nombostratus.
Originally the mermaid was a marine species, so it would be very natural to return her to the ocean. However if you find her by chance after reading this document,
I would appreciate it if you would let her free or bring her to me, if you are a senstive enough, I believe you would not sell her to a dubious circus, but you would leave her to the ocean.
あまりの荒唐無稽な話に読者は失笑し学会からも追放に近い処遇をされた奇書なんだが。これはキアにあげるから家で読んでくれ」
俺のオンザロックはとっくに水没して薄茶色の液体に変わっていた。

数億年もの気が遠くなるような年月を、セレベスの闇の海中で生き延びてきたシーラカンス、人科などこの世に出てきてたかだか数百万年じゃあないのか。海の中に手を入れるようになって数万年、水面を動けるようになって数千年、そんな妄想が生まれる長い夜だった。


 
 
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