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36 ニラの人魚 第三章 4 (邂逅)

アンボン
  ニクラスは念のためふたりのガイジンを洗った。そんな仕事は朝飯前でムルパテイの搭乗者名簿にはジャカルタのダッチとジャップ、ともに新聞記者。ブンヤとは気に入らない。奴らはハイエナのように嗅ぎ廻ってあらぬ事を書き立てる屑だ。銭にならないどころか銭を持っていない。誰が味方はこれで決まった。あとは教授をどう料理するかだ。

電話は教授からだった。
「アメリカ人はシーラカンスのパテントを持っています。パテントとはご存じでしょう、外の人は手をつけてはいけないとゆう意味です。だからマキアンの男達に化石魚の捕獲はできないのです。行ってそのように話してくれませんか」
「よく解りました。そのようにしましょう。しかし前にもお話ししたようにこれは軍務外ですから経費は教授が負担なさるって事でいいですね。アンボンからだと現場まで500`以上ありますが」
「わかりました。経費を見繕って電話をください。手配しましょう」
「教授、彼等は学者じゃあなくマスコミの連中です。口さがない小利口な連中らしくシーラカンスは秘密にしてほかの魚か何か、モヨヨとかゆう架空の魚を探すとか煙に巻いているから一筋縄じゃあ行きませんよ。ジャカルタでどこかの許可とか認可を受けてるかも知れないし」
「別の化石魚?」
「よくは解りませんが現場の情報では今のところそうです。彼等が先に揚げたらアメリカ人は困るでしょうね」
化け物魚ではなく教授が釣り針にかかった。ニクラスはほくそ笑んだ。


アメリカ人は教授から電話の事を聞いて耳にひっかかった。以前マクソンの話の中に同じような名詞があった気がしたからだ。教授はこの土地の昔からの物語だと言ったけれど。
マナドトウアに小さいが新しい白いモーターボートが近づく。
干してある網をかき分けて肥って若禿の白人が腰を屈めてドアをくぐる。
「やあマクソン働いているかね、今日の漁はどうでした? 実は聞きたいことが出来てね」 マークは今ではだいたいのインドネシア語は理解できたし話せるようになっていた。
「なんでしょう? いままで何百年もあの魚は捕れなかったのですから焦ってもそうは掛かりやせんよ」
「いや、この前君が話していたシーラカンを初めて獲った夜のことだが覚えているかね」
マクソンはしめたと思った。怖い思いをしたことが懐ろにプラスになるなら少し大袈裟に喋ってもそれでトアンが喜べばお互いに幸せとゆうものだ。
「いやあ、忘れるなんて。思い出すといまでも生きた心地がしませんや、海坊主っているんですねえ、大きな口を開けて吠えてプラフをこう揺すってきたんですから食われると思いましたよ」
「それからは出ないのか」
「後にも先にもあたしゃ一回こっきりですが、漁師仲間はあたしの話を聞いてそれはムヨヨワってゆう怪物で、昔からこの界隈に住んでいる言い伝えがあるって言われましたよ」
「なにか大きな魚とか鮫とか鯨に似てはいなかったか」
「そういわれりゃあ、ドウユンのお化けみたいだったなあ」
米国人はマナテイの一種かと考えた。フロリダのマナテイはインデイアンが人間と考えていた時代があった。
なにかはいるのだがそれが何かはさすがの海洋学者にも解らない。
「君の外にも見た漁師はいるのかね」
「ええ、けっこういますでサ。だけんど、話さないでしょう。祟られるとか気がふれるとか、まあ見た男以外にゃ信用しませんからねえ。わっしが旦那に話したのは特別でサ、いつも好くして下さるんで。でも旦那、あいつはでかいですゾ。シーラカンなんかメじゃないっすよ。プラフをぐるぐる廻すんですから」
「ほかの島でもそんな話はあるのかね」
「旦那、この長いミナハサの岬の下はがらんどうなんですって。だからシーラカンも生き延びたわけで。奴らは自由に行ったり来たり、隣りのハルマヘラ、ジャイロロには奴らだけの道が繋がってるって謂いやすで。隣り島でなんて呼んでるか知りやせんが、そりゃあ
いますですよ。でもデモクラシ時代でそんな話したら未開人になっちゃうから」
マークでもおおよその意味は解った。学者として受け取れる話ではないがコモロにしかいないとされていた化石魚がいたのだ。もし彼等ジャーナリストが何かの情報を取っているなら放ってはおけない。彼等が早耳なのはこの化石魚発見の時で知り抜いている。そしてあることないこと書き立てれば今後のシーラカンスの学術的研究にも支障を来す。
此処は何としても自分が確保した領域として守らなければならない。新種発見も私が最初でなければならない。
翌日大学(とは言っても世界水準では高校程度だが)で教授に会う。
「新種がいるかもしれない。化石魚も含めて是が非でも我々が最初に発見したいのです」
「スラウエシは世界でもこの島だけの種が棲息しているのは先生もよくご存じでしょう。
始祖牛のアノア、体長の1/3もの卵を地熱で孵化させるマレオ、世界最小猿タルシウス、蝶の新種は毎年発見させている程です。磁石も効かない雨林にはまだ何が潜んでいるか未知の領域なんです。地上でそうですから海の中は尚一層でシーラカンスなど序章と申してもいいのかも知れません。新種発見は是が非でも先生がなさらなくては私の名誉にも関わります」
「彼等を排除できますか」
「方策はないとはいえません。考えましょう」


痛い程プレスの効いた濃緑のユニフォームに濃いサングラス、焦げ茶の軍靴ですれ違う乗客は道をあける。
打ち合わせ通りニクラスを空港に出迎えた教授は真っ直ぐマナドビーチホテルでマークに引き合わせた。だだっ広いレストランに客はこの三人だけだった。
「その後の情報では彼等は出航準備をしています。行き先は間違いなくゴライチ礁です。
あ、そこはマキアンの南西80`ほどの外洋です。マナドからは300キロ,160哩位でしょうからスピードボートなら10時間てとこでしょうか。とてつもない化け物いや新種の魚、まあ鮫かいるかの一種みたいなのを見つけるとか見つけたとか騒いでます」
「私達はご説明した通りです。独占を守らなければならないのです。お力をお貸しねがえますでしょうか」
「小官はいつでも教授先生のお味方です、今は非公式ですが場合によってはコンバットを組むのも可能です。職務ですから。でもその必要はないでしょう、たかが数人の民間人ですから現場を押さえて命令するだけです。聞かなければ改めて、、」
化石魚とか新種の発見はそんなに激しい競争なのですか? まあ新型車開発競争ほどに秘密と資金がかかるのでしょうな、と抜け目なく加えることも忘れなかった。

研究室は総出でゴライチ行きに取りかかる。
去年サンジエゴから運ばれたボートはグランドバンクスクルーザーでヴォルヴォペンタ250馬力インボード2機搭載の新鋭調査船で申し分ない装備を持っていた。
研究生は手分けしてスキューバ、最強の水中銃を運び込むのを教授、マークはチェックしていた。


 
 
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