「最低の上司」その一 「最低の上司」その二 「最低の上司」その三
「最低の上司」その四 「最低の上司」その五 「最低の上司」その六
「最低の上司」その七 「最低の上司」その八

4.部下に対してやたらに説教を垂れるばかりで、仕事の本質にまで一向に立ち入らず、無限にとぐろを巻き続ける上司。

[解 題]

人間とは何処かで他社に対して優越感を得なければ精神的な安定を保てない存在である。この性向事態は諸刃の剣であるが、一概に排斥すべき性質のものではない。ただ最も忌み嫌うべき形で表出するのがこの場合である。具体的には、おとなしく口答えをしない部下を捕まえ、ただひたすら優越感を吸い取らんがために、意味もなく長々お説教を垂れ、自分の仕事を一刻も早くはかどらせたい熱心な部下を苛立たせ、挙げ句の果てには部下のせっかくの闘志の炎を吹き消してしまうのである。
優越感の補給の場は『打ち合わせ』とか『会議』とかに留まらず、外交先への移動の途上など、上司の立場が通用するあらゆる機会に渡る。而うしてその方法には、部下からすれば愚にも付かない仕事上の思い付きを、さも大層な発明であるかのように喧伝することから、更には無駄飯を食った日々の回想をお経の如くくどくど語り続けること迄、創意工夫などとはまるで縁もゆかりもない普段の姿からは、とても想像が付かないほど多種多様で、しかも驚くべき執念まで感じさせるのである。
非生産的な局面に全勢力を注がなければ精神の安定が図れないこと自体、愚鈍さを示す証拠なのだが、こういう手合いを上司と仰ぐ部下にしてみると、笑い事ではすまされない。何故なら部下は仕事を矢鱈に中断させられた上に、何の役にも立たない退屈な話に付き合わされ、自分の仕事をこなす必要最低限の時間まで奪われ、更には仕方なく相槌を自分に自己嫌悪さえ覚え、精神的に腐ってしまうのである。始めから巧く立ち回ろうとする目端の利く輩は、ここぞとばかりに上司に媚びへつらい、最低の上司の靴をハンカチで磨いたりして取り入り、無能でも待遇その他で優遇されるため、心ある部下はますます上司から離反することになる。

[対 策]

かく言う上司と議論しようなどとは間違っても考えてはならない。所詮何時までも自己陶酔しているだけで先に進めぬ人間とは、プロフェッショナルとアマチュアとの違いを説教するくせに、自分は真っ先にアマチュアを決め込んで恥とも思わない最低の存在なのだ。そもそも向上心を持った若人とは、どうあがいても永久に平行線を辿るだけで、まともに相手にしようと考えること自体間違っている。従って前々の項目で示した方法で上司を根本的に洗脳する以外は、余り有効な方法は見あたらない。但し何時迄も最低の上司の言動を、頭ごなしに無視していても、職場の雰囲気が悪くなるだけである。出来るものならば自分自身の人間的な成長を鑑みて、大きな人類愛を持って上司に接したいものだ。もし可能であるならば、それがこの課題には一番の解決策であろう。
如何に自信喪失し、欲求不満に陥ろうとも、安易な方策を講じて優越感を得てはならない。つまり優越感とは、良い仕事を日々重ねようと努力する過程と、仕事がもたらす結果とによって、健康な自信と誇りと共に正統的に我がものにすべきものなのである。人に絶対負けないだけの自信とは、何年もの自己修練と運の良さとによってもたらされるのである。辛い日々かも知れないが、本物になるにはそれに価する苦痛を、嫌と言う程味わい尽くさなければ、新たな地平ば開けない。これは正に向こう見ずに等しい若先鋭的な人にしか与えられぬ特権でもあるのを、十分心に銘記すべきなのだ。
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